NHKの上記番組に関連して患者様、病院関係者から放送内容について質問されることが多いので、あくまでも私見とお断りしてお返事しています。
最も多いのが累進多焦点レンズ(眼鏡)についてです。
30年以上前から老眼の眼鏡レンズとしてごく標準に使われている累進多焦点レンズ(さかい目のないレンズのことです)が、あたかも新しいツールのように、放送を見た人に捉えられていたようです。
白内障手術の際に使用される人工眼内レンズでは、昨年迄先進医療として似た用語の多焦点眼内レンズが対象になっていたので、その連想で新しい先進的な高機能の眼鏡レンズと感じてしまった方もおられました。
『老眼の眼鏡用として一般的に使われている累進多焦点レンズを、適切な使い方をすると生活が楽になり得ますよ』というのが放送の意味です。
30年前も現在も境目のあるレンズは、小児の内斜視で使われることが有ります。それに対して老眼や疲れ目で使われる、境目のない眼鏡レンズは以前から基本的に累進多焦点レンズの機能をとり入れていると考えて良いかと思います。
また、コンタクトレンズでも老眼用に多焦点レンズが処方されることが多くなったおります。
なお番組内で男性ゲストが眼科医梶田先生の検眼で累進多焦点レンズの眼鏡をかけると、全て見えてびっくりするような場面が有りました。
これも以前から行われている検眼内容です。
そして大事なのは恐らく今後ゲストがその一見万能レンズに思われる眼鏡を処方されても常用として使用するかは?ということです。
彼は恐らく今の見え方にあまり不満を感じていないと思います。
なぜなら彼は30~50センチが裸眼で良く見える近視ですので50歳前後からは現代社会ではとても便利で楽な目なのです。
梶田先生も眼鏡の視力は1.0とはっきり見えるようにすることだけが目的ではなく、0.7から0.8ぐらいで楽に感じる眼鏡が良い眼鏡ということを言っていましたが、個人毎の近視、乱視、遠視、生活、趣味、運転、今までの眼鏡やコンタクトの処方内容によって使いやすい有用な眼鏡処方は異なってきます。
ゲスト(コメディアン?の飯尾さん)は恐らく今後の生活での眼鏡は、車の運転用の遠用眼鏡、スタッフルーム等での台本やスタッフと打ち合わせするための累進多焦点レンズ、そして放送現場等多くの時間では今までどうり眼鏡なしを彼が選択するのではと想像されます。
梶田先生含めて説明したいのは近視は決してマイナスばかりではないですよということです。
放送内容は近視についてが主でしたので、近視予防や認知症との関連について殆どが近視を病気として捉えたものでした。
次回明日以降に番組での近視に関した内容への質問、および私見を載せさせていただきます。
大船いのうえ眼科
井上克洋